歴史的にみると初めから美術という

概念があったわけではない。

人間がなにか道具を用いてつくったものを美術という枠でくくり、文化的現象の一分野としてみなすに至ったのは近代になってからのことである。

美術のもっとも古い作品が旧石器時代の洞窟絵画や石製の女神像にまでさかのぼるように、美術は人間の歴史とともにあったといえる。

しかし、旧石器時代の絵画・彫刻であれ、歴史時代に入ってからの作品であれ、つねに現代の美的視点でとらえたものが美術の対象となるのである。

造形されたものであるから美術品だとはいえないわけで、現代人の美的感覚に訴えるものこそ美術といえる。

様式のこのことばは芸術的表現の方式をさすが

一般に個々の人間や社会あるいは民族の行動・生活の仕方や、形成の方式に使われることがある。

様式と訳した外国語の語源はラテン語のスティルスstilusであり、これはもともと文章の書き方、あるいは文体を意味するものであった。

それが用法としてしだいに拡大され、18世紀にはドイツのウィンケルマンによって美術史の領域に取り入れられ、美術的表現の方式として適用されるようになる。

その後、ゲーテの芸術論やシェリングの美学にも取り上げられ、19世紀後半にはリーグル、ウェルフリンらによって、美術史学の基礎を築くうえで方法論を展開するための、有力な概念として用いられるようになった。